音律の認知的歪みと類似性:AHPおよび相関係数による分析

updated: 6 Mar 2008

音律の認知的歪みのAHPによる分析および相関係数による類似性・音楽性の分析 (tone_ahp.xls)(2008/2/9 revised 3/6).

概要:AHP法は一対比較に基づき、多基準評価に含まれる矛盾の程度を整合性指標(C.I.)によって 計ることができる。一方矛盾が含まれていない場合でも、その歪みを捉えるより精密な 検討が可能である。数理に基礎を置きつつ、人類が工夫してきた音律は、そのテスト ベットとして興味深いと思われる。本シートでは調性を考慮した周波数比の 一対比較行列に対してAHPを適用し、音律の認知的歪みを求め比較した。 調性は変音記号が3つまでの範囲とする。また調性ごとのスケールについての 相関分析によって、各音律の各調性 が互いにどの音律に最も類似しているかを明らかにした。驚くべきことに、 オイラーの音律には調性間の認知的歪みがほとんど無いことが分かる。 しかしオイラーの音律は、純正律とは別の理由で、やはり実用的な意味を持たない。 その理由はピタゴラス律と純正律のいずれからも遠いことにあると考えられる。 一方、平均律は、認知的歪みにおいては高く評価されないが、ピタゴラス律から の距離(非歌謡性)と、純正律からの距離(非和声性)とが、各調性において いずれも小さい値に揃っており、この意味において最適化されている。